jnobuyukiのブログ

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心理学の構成概念について

本日は、心理学が扱う「構成概念」を取り上げます。独特な考え方をするのもポイントですが、一般的にも用いる単語が構成概念を指す用語として扱われるとどうなるかについて考えてみます。

そもそも構成概念とは

構成概念というのは実体を持たない説明のために有用な概念と考えると良さそうです。例えば、心理学で扱う構成概念の1つに「知能」があります。知能という概念について、環境により適応しながら行動を選べる能力と仮に定義してみます。このような能力があると、様々なテストで高得点を上げることができたり、特定の職業に寄らずに社会で活躍することをうまく説明できそうです。ここで、知能が脳の特定の部位やその活動に依存していないことが重要です。一般に心の働きは、脳の働きに結びついていると考えられますが、心理学で構成概念として定義している際には、必ずしも脳の特定の部位の活動にその実体を求めていません。

構成概念には定義が伴う

上記の例では、環境への適応という緩い定義を考えました。実際には、もっと厳密な定義を与えることもあります。例えば、上記の知能は、数字や場面の記憶、言葉の知識のようないわゆる知能テストによって測られるものと定義されます。

一般的に使われる言葉が構成概念を示す用語になる

知能という言葉は、心理学だけで用いられる言葉ではないですね。例えば情報学分野では、人工知能がしばしば取り上げられます。また、学術領域とは異なる一般的な言葉としては、知能が「頭の良さ」とか「地頭の良さ」などと考えられることもあります。同じ言葉であっても、学問領域が異なれば、定義が異なることがありますし、一般的に使われる意味とは異なることもあります。現代の心理学は、19世紀末頃から盛んになっており、物理学や数学に比べれば比較的新しい学問です。様々な心の働きを説明する際に、これまで一般で用いられた用語を使い回すことで心の働きを直感的に理解しやすくすることが考えられていたのかもしれません。一方で、これが混乱をうむもとにもなっており、厳密に定義を行った心理学の構成概念としての言葉が、そのまま別の意味として一般に用いられることで混乱や誤用が起きやすくなるでしょう。この問題への対処としては、構成概念として定義を設定した上で言葉を使っていることを伝えていくのが良さそうです。さらに、学問や学問で得られた知見が社会に浸透・普及するためには、学問領域ではしばしば言葉に定義が設定されていると理解することが重要であると思います。