jnobuyukiのブログ

研究していて困ったことやその解決に関するメモ。同じように困ったあなたのために。twitter ID: @j_nobuyuki

研究者とは何をする人か?それに必要な資質は?

今回は、「研究者って何か?」を考えます。一応研究者であるので、職業としての研究者や自分の経歴を紹介する機会があります。しかし、先日のそのような機会では、そもそも研究者が何かをうまく語れなかったんです。なので、反省文も兼ねて、研究者やその資質について思うことをまとめておきます。

研究って何?

あらためて「研究とは?」と考えてみると、意外に定義が難しいのですが、なるべく短い言葉で言うなら「新たな知の創造」だと思います。今まで誰も知らなかった問題の答えを見つける。または、ある現象を今まで誰も考えなかった方法で説明するといった感じです。言葉としては短いですが、これを成し遂げるのはなかなか大変です。なぜなら、それが信頼できる知識であることを周りに認めてもらわなければならないからです。例えば、新しい知識を裏付けるきちんとした証拠が必要です。それが、実験や調査によって得られるものであれば、誰がやっても結果を再現できるだけの必要十分な手続きの記述がいります。また、結果の解析方法やその解釈に論理の飛躍があってはなりません。そういった一連の作業をまとめ上げたものが論文となります。

次に、知の創造をもう細かく考えると2種類別れると思います。1つは「新しい価値の創造」で、新たな知見が世の役に立つような場合です。もう一つは「新たな知識の創造」で、役に立つかどうかはおいておいて、今までわかっていなかったことを知識として定着させるような場合です。ただし、この2つは排他的なものではなく、両者を兼ね備えることも可能だと思っています。これについては、「パスツールの象限」という記事を以前に書きました。

webbeginner.hatenablog.com


また、「新たな」知の創造となるためには、「今までに何がわかっているか」をきちんと把握することも重要です。よく言われる「巨人の肩に乗る」という言葉が表しているように、歴史を作ってきた大研究者やその人たちが作ってきた知識体系に敬意を払い、さらに自分で新しい何かをそこに加えていくのが研究者なのかなと思います*1

研究者ってどうやってなるもの?

研究さえしていれば、研究者なので、どうやってという問いは本来成り立たないかもしれないですね。しかし、職業としての研究者を目指すのであれば、基本的には大学学部の卒業に加えて、修士または博士課程の大学院を修了する必要があるでしょう。特に、大学でのポストを望むのであれば、最近は博士号取得がほぼ必須になっています。ただし分野によっては、一度専門職として社会に出てから、研究者として大学・研究所に入るようなキャリアパスも考えられます。

研究者として重要な資質は何?

世の研究者のイメージとしては「勉強が得意・大好きな人」なのかなと思います。確かにそういう人が多いです。でも、勉強が得意・好きなだけでは、「研究者」としてやっていけるかどうかはわからないと思います。私が、研究者になくてはならない資質の一つとして考えるのは、「批判的精神をもっていること」です。ここでいう批判とは、理屈もなく他を否定することでもないですし、揚げ足取りをすることでもないです。上記のような、新たな知となる可能性があるものを「本当にその説明でいいのか」疑ってかかる精神のことを指しています。これは、他に向かうばかりでなく、ときには自分の考え、データ、解析方法も批判的に見る必要があります。例えば、どんなに業績のある人が言ったことでも、教科書に載っていることでも「本当にそれでいいか」自分の頭で一度考えてみるのが、批判的精神です。常に疑ってかかるという意味では、かなり面倒臭い人です。でも、それがあることで、真摯な研究が成り立ちます。

ただ、誤解して欲しくないのは、批判的な精神は、もとからある性格のようなものではなく、トレーニングによって習得するものだと思います。なので、これから研究者を目指すあなたが現時点で批判的精神を持ち合わせていなくても大丈夫。徐々に的確な批判ができるように訓練していきましょう。

*1:google scholar という学術文献検索のサービスのページに「巨人の肩に乗る」という言葉があるのはこの意味でしょう