前回、科学研究には、基礎と応用の2種類があることを紹介しました。このような枠組みは、かなり長い間、国家、産業界、学会のいずれにとっても安定していて、自明のことのように思われてきました。しかしStokes🌁は、この枠組みに含まれる矛盾を指摘しています。
基礎と応用の中間にあるのは?
これまでの基礎と応用の区別をする考え方では、基礎と応用のそれぞれを両極においた直線的なモデルを想定してきました。全ての研究が、純粋な基礎と純粋な応用の間のどこかに位置付けられます。全ての基礎寄りか応用寄りかで特徴づけられるので、便利です。ただし、基礎と応用の両方の要素を持つ研究は、どっちつかずの中途半端という印象を与えます。
パスツールの研究
Stokesは、基礎と応用の両方の要素を持つ研究は、決して中途半端ではないことを説明します。具体的な研究例として、パスツールの仕事を挙げています。パスツールは、フランスの研究者です。もともとは化学専攻でしたが、生物学や医学など幅の広い研究を行いました。彼の業績の中でも、ワクチンの原理の発見は、生物の基本的なメカニズムのひとつとして免疫システムを提案したことから、基礎研究の要素を持ちます。また、ワクチンの原理を発見したことで、予防接種が開発されて、多くの感染症の予防につながりました。つまり、社会問題の解決にもつながったので、応用研究としての価値も高いわけです。パスツールの仕事はWikipediaにも掲載があるので、詳しくはそちらをご覧ください。
ルイ・パスツール - Wikipedia
では、パスツールの研究は、中途半端なものでしょうか?そんなことありませんよね。むしろ、基礎研究、応用研究のいずれの要素をみても著しい功績と位置付けられます。つまり、基礎と応用を直線的に結んだような研究の分類法では、パスツールの業績を正しく評価することができないわけです。
そこで、Stokesは、研究を分類する新しい方法として4分割モデル(Quadrant model)を提案します。次回、そのモデルについて説明します。