前回の投稿では、従来の基礎と応用の研究を1次元的に考える場合の不都合を紹介しました。Stokesは新たな提案として2次元モデルを提案しています。
2次元モデル
これまで、基礎と応用は、研究を位置づける直線上の両極端と考えられてきました。これをStokesは、次のように2つの軸で捉えなおしています。
- 基礎研究としての要素:知の拡大・創造に貢献している・いない?
- 応用研究としての要素:現実の問題の解決に貢献している・いない?
図で考えるとこのような2次元モデルで表されます。この投稿のタイトル「パスツールの象限」の『象限』とは、2次元の軸で区切られた4分割の1つのことです。
知識を拡張している? | ||
現実の問題に役立つ? | いいえ | はい |
はい | 純粋な応用研究(エジソン) | 現実問題の解決に応用可能な基礎研究(パスツール) |
いいえ | 純粋な基礎研究(ボーア) |
各象限を代表する研究者
Stokesは4つの象限のうち、3つについて有名な研究者の名前を付けることによって、それぞれの研究の特色をより分かりやすく示そうとしています。
- エジソンの象限:発明家としてのエジソンの業績は、今日の社会にとって重要ですが、彼自身は新しい理論の発見にまったく興味がなかったようです。きわめて現実的な問題を扱う研究者だったことから、純粋な応用研究の代表となっています。
- ボーアの象限:ボーアは、理論物理学者で、現在の量子力学を確立した研究者です。ボーアから始まった新しい物理学の流れは、応用的な要素ももちろん持っていますが、ボーア自身は純粋に原子模型の理論の発展を目指しました。というわけで、純粋な基礎研究の代表とされています。
- パスツールの象限:前回の投稿でも取り上げましたが、パスツールが発見した免疫システムは、生命科学の基礎となる重要な発見であっただけでなく、予防接種の開発を通じて社会へも大きく貢献しました。つまり、パスツールの研究は、基礎的にも応用的にも重要であったということです。