誰かに何かを主張したいとき、相手に納得してもらう手段はいろいろあります。最近のビックデータ解析の流行は、そんな説得の手段の一つになれるでしょうか。ビックデータ解析のようないわゆるエビデンスに基づく主張が社会に根付くかを考えていた時に気づいたことを書いてみます。
エビデンスが説得に役立つためのポイント
ポイントは少なくとも二つあると思います。
エビデンスが中立、客観的な基準で作られたものか?
まずはエビデンスそのもの信頼性が問われます。主張内容に合いそうな調べ方をする。結論ありきで、それに合わない結果を無視する。これでは説得には使えません。
エビデンスと主張内容の間に飛躍がないか?
主張したい内容に十分なエビデンスを探すのは意外に大変です。エビデンスを一般化できる範囲が狭いのに、普遍性を主張すれば、「大風呂敷」と思われかねません。
ここまで考えてきたように、「本当にそのエビデンスで良いのか」という批判的な思考*1がエビデンスの信頼性と妥当性を支えている気がします。
そして本当に大事なのは?
大事なのは、聴く側。説得される側です。相手の話を理解する。それはもちろんですが、さらにエビデンスへの批判的な思考という態度を保てるかどうかだと思います。
批判的な思考がなければ、主張を鵜呑みにする。それとも、全く寄せ付けないのでしょうか?「あの人が言うなら」という主張内容を無視した信任投票が行われるかもしれません。しかしこれは結果として、エビデンスの品質を下げることになる気がします。品質を気にする人がオーディエンスに少ないからです。
だからエビデンスベースの世の中になるには、エビデンスを作る側、主張する側だけじゃなくて、誰もがデータの性質やロジックに敏感になることが大事だと思います。
*1:2014年11月28日追記 ここでいう批判的な思考は、心理学で用いられる専門用語です。あげあし取りとも、ディベートにおける批判とも違います。批判的思考を解説したすばらしい記事がありますので、興味を持った方はぜひ以下をご覧ください。 http://www.psych.or.jp/publication/world_pdf/61/61-5-8.pdf