jnobuyukiのブログ

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2要因の分散分析での交互作用効果と単純主効果検定の関係

今回は、2要因の分散分析をするときの交互作用と単純主効果について説明します。ややこしい話題ですが、具体的なストーリーで説明して、ちょっとでもわかりやすくと思っています。

想定例:学生の専門分野による文章内の図表の挿入効果の違い

今回は、ある文章を読んだ後の理解成績を興味の対象(つまり従属変数)にします。このとき、文系学生(20人)と理系学生(20人)に参加してもらい、文系理系という専門分野の違いが理解成績に影響するかを調べます。

また、文章に関して、図表の有無が操作されていました。これについて図表の有無が理解成績に影響するかを調べます。というわけで、今回は専門分野(理系、文系)と図表(あり、なし)という2つの要因を設定し、従属変数である理解成績に及ぼす影響を2要因分散分析で検討します *1。なお、それぞれの要因の組み合わせの参加人数はそれぞれ10人とします。

主効果

先ずは普通の主効果を考えましょう。図表の有無で理解成績が異なるかを調べます。主効果を検討する場合は、図表の有無のみを考え、学生の専門分野は無視します。つまり、図表ありの文章を読んだ20人の学生と図表なしの文章を読んだ20人の成績を比較します。平均成績を求めたところ、図表なしは平均80点、図表ありは平均85点でした。同じ方式で、専門分野による理解成績の違いの主効果も検討できます。

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交互作用

次に交互作用について考えみましょう。交互作用は組み合わせ次第で生じる効果の大きさの違いに注目します。今回の例では、図表の有無による違いの大きさに着眼します。組み合わせによる効果は、図表の有無による理解成績の違いの大きさが文系学生と理系学生とで異なるかを意味します。

以下では、交互作用の出現パターンに関して3つのストーリーを考えてみます。

交互作用なしの場合

最初に交互作用が全くない場合を考えます。このとき、図表の有無による違いの大きさが、文系学生と理系学生で全く同じであるということになります。ちょっとややこしいのですが、違いの大きさが同じであれば、図表による違いがあってもなくてもどちらでも良いです。今回の例では、こうなりました。

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どちらの専門の学生も、オンデマンド講義を受けた後の成績が対面講義を受けた後の成績よりも5点高いというわけです。

文系では図表の有無による違いがなく、理系だと違いがある場合

次は、いよいよ交互作用がある場合です。先ほど交互作用がない場合で確認した通り、交互作用効果がないというのは、図表の有無による違いの大きさが専門分野で異ならない状態です。そうではないというためには、専門分野で図表の有無による違いの大きさが異なるか調べます。異なるといっても、色々な事なり方があります。このセクションでは、文系だと図表の有無による違いが見られないが、理系だと図表があることによって理解成績が伸びるというシナリオを示します。

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グラフが示すように、文系学生は、図表に有無に関係なく理解成績は80点でした。一方、理系学生は、図表なしの文章についての理解成績は80点でしたが、図表のある文章についての理解成績は90点です。この場合、図表の有無による違いは、理系学生のみに有効だとなります。確認ですが、文系学生の場合、図表の有無による違いは0点、理系学生の場合は10点です。このように図表の有無による違いの大きさが異なる場合に、分散分析の交互作用が有意となります。

文系と理系それぞれ図表に有無による違いがあるが、効果の出方が逆な場合

授業方法による違いが、逆向きの効果で現れるような場合にも、分散分析の交互作用効果が有意となります。グラフで示すと、二つの線が交差するので、目立ちます。

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ここで示されているように、文系学生の場合、図表なしだと85点、図表ありだと80点で図表がない方が理解成績が高いです。一方、理系学生の場合、図表なしだと75点、図表ありあと90点で図表があった方がよいとなります。これも、図表の有無による違いの大きさが専門分野によって異なるので交互作用は有意になります。

ここまでのまとめ

2要因分散分析における交互作用とは、ある要因の効果(今回の例では図表の有無による違い)の大きさが、他方の要因の水準次第で(例では文系か理系か)異なるかどうかを示しています。交互作用が現れるパターンを2つ示しましたが、他にも色々なパターンがあります。そして、気づいて欲しいのは、交互作用が有意になったからといって、どの条件とどの条件に差があるのかを直ちに決定できないことです。これを明らかにするために、次から説明する単純主効果検定を実施します。

単純主効果検定

単純主効果検定では、1つの要因について、ある水準だけの場合を取り上げて、そのデータの範囲内で、もう一方の要因の効果の有意性を検証します。今回の例では、文系の場合、もしくは理系の場合のデータというように、データを一旦分割して、分割されたそれぞれのデータを用いて、図表の有無による違いの検定(この例ならt検定)を行います。ここで、2回のt検定を行うので、有意水準に関する調整が必要です。調整しないと、実際には差がないのにもかかわらず、検定の中で誤って有意差ありとなってしまう可能性が高まります。調整方法はいろいろありますが、しばしば用いられるBonferroni法では、p値に検定する回数をかけて、それでも5%未満になるかを検証します。

注意:分散分析と単純主効果検定の順序

ここで注意して欲しいのは、分散分析が必ず先行します。さらに、分散分析で交互作用が有意になった場合にだけ、単純主効果検定を行うのが一般的です。(研究仮説として、どうしても細かい場合分けを見なければならない場合には、交互作用効果が有意にならなくても、単純主効果検定を実施することがあります。)

*1:この時点で訳がわからないと後半は苦しいです